その地方には属していないのにその地方の都道府県と結びつきが強い県というのがたまに存在します。岡山県(中国地方)と結びつきが強い香川県や、近畿圏と結びつきが強い福井県などが一例です。

そして今回のテーマである徳島県もその一つです。例えば近畿ローカルの天気予報では、大抵徳島の天気が岐阜や福井県南部などとともに表示されます。

その一翼を担っているのがなんば~和歌山~徳島間を鉄道と連絡船で結ぶ「南海フェリー(南海四国ライン)」と大阪(梅田)~なんば~舞子~徳島間を明石海峡大橋経由で結ぶ高速バスです。

そこで今回は近畿~徳島間の移動にはどちらがいいのか様々な観点から比較したいと思います。

1.運賃・料金

やはり私のような貧乏人にとって一番の懸案事項となり得るのは運賃・料金です。いくら快適でいくら時短ができるとも値が張っては躊躇してしまうものです。

さて、大阪(梅田)、なんば、天王寺、堺を基準とした際にかかる費用は以下となります。

●南海フェリー利用
大阪(梅田)発:2,590円(大阪環状線、とくしま好きっぷ、徳島市営バス利用)
なんば発:2,310円(とくしま好きっぷ、徳島市営バス利用)
天王寺発:2,440円(大阪環状線、とくしま好きっぷ、徳島市営バス利用)
堺発:2,310円(とくしま好きっぷ、徳島市営バス利用)

南海電鉄の特別企画乗車券「とくしま好きっぷ」は、鉄道と船をあわせて2,200円という破格のきっぷのため、かなり費用を抑えられます。

●高速バス利用
大阪(梅田)発:3,420~3,800円(阿波EXP大阪利用)
なんば発:3,040~3,800円(阿波EXP大阪利用)
天王寺発:3,200円~3,960円(関西本線、阿波EXP大阪利用)
堺発:3,300円~4,060円(南海電鉄線、阿波EXP大阪利用)

価格変動制のため利用日や利用便によって多少の差がありますが、いずれも南海フェリーには負けています。費用面では南海フェリーに軍配が上がります。

2.所要時間

先ほどということが変わりますが、反対にいくら安くとも無茶苦茶に時間がかかるというのも困りものです。そこで今度は所要時間で勝負したいと思います。

●南海フェリー利用
大阪(梅田)発:4時間程度
なんば発:3時間半程度
天王寺発:3時間半程度
堺発:3時間20分程度

航海の時間は2時間ほどですが、市内から和歌山港までの時間、乗継ぎの時間、徳島港から徳島駅までの時間を含めるとおおむね3時間半から4時間程度かかってしまいます。

●高速バス利用
大阪(梅田)発:3時間弱程度
なんば発:2時間40分程度(OCATから南海難波まで含む)
天王寺発:2時間40分程度
堺発:3時間弱程度

時間で見れば高速バスの圧勝です。和歌山に近く大阪市内から少し離れた堺市内からでも30分程度、大阪市内からなら1時間前後の時短となります。

3.乗換回数、乗換時間

たとえば同じ30分にしても電車に乗ってしまえば1本で着く30分と、7分乗って3分で乗り換えて、また8分乗って5分で乗り換えて、もう一回7分乗って、で着く30分があれば、前者のほうが快適で後者のほうがストレスフルであることは明らかです。

そこで次に検討するのが乗換えの回数と乗換えに要する時間です。

●南海フェリー利用
大阪(梅田)発:3~4回、30~40分程度(新今宮、〈和歌山市〉、和歌山港、徳島港)
なんば発:2~3回、25分~35分程度(〈和歌山市〉、和歌山港、徳島港)
天王寺発:3~4回、30分~40分程度(新今宮、〈和歌山市〉、和歌山港、徳島港)
堺発:2~3回、30分~40分程度(新今宮、〈和歌山市〉、和歌山港、徳島港)

●高速バス利用
大阪(梅田)発:0回
なんば発:0回
天王寺発:1回、5分程度(JR難波/なんばOCAT)
堺発:1回、15分程度(なんば/なんばOCAT)

これについては高速バスの圧勝です。高速バスが大阪梅田やなんばからダイレクトで徳島駅まで行ける一方、南海フェリーでは南海沿線からでも最低2回、大阪梅田からだと最大4回の乗換えが必要となり、これだけで40分もとられてしまいます。

4.旅情・景観

ここまでは合理的な話でしたが、ここからは情の話に移ります。旅情です。古から日本人は旅の好きな性をもつわけですから、この点でも比較しましょう。

まずは高速バスから。私は実は高速道路が好きなので高速バスも嫌いではないのですが、やはり高速バスというのはとりあえず移動するだけのものというイメージが世間にはあります。

また2列×2の4列シートなので、通路側になった時には少しキツいものがあります。私は連休の最終日に一度この区間で乗りましたが、窓側最後の1席か2席をギリギリとれたということがありました。

対してフェリー。こちらは旅情がないわけがありません。かつては青函連絡船や宇高航路など多くの鉄道連絡船がありましたが、みんななくなってしまいました。富山県営渡船と宮島航路は鉄道連絡船というらしいですが、いずれも数分乗ったらおしまいです。

そんな中にあって鉄道駅から桟橋まで直結していて列車を降りたらすぐに船というのにはワクワクするものがあります。

また鉄道のほうも、520円かかりますが指定席で海側をとれば目前まで迫る大阪湾を楽しむことができます。

5.まとめ

ということで、結論としては多少値が張ってもいいから早く楽に行きたいならバス、多少の不便は甘受しても安く行きたい、あるいは旅情を感じながら行きたいならフェリー、ということになりました。

…………調査する前からわかりきってましたね…